節制・悪魔・塔
節制・悪魔・塔のカードみたいな小説の話。
ある小説を読みました。
その小説の内容が、ちょうどタロットカードの
「節制→悪魔→塔」の順で話が展開してるな~と感じたので、
そのあたりについて書いてみたいと思います。
残念ながら今回はネタバレになってしまいますので、
小説のタイトルは明かせません。
その前に各カードの解説をしていきます。
感想なんか興味ない方もいると思いますので、
カードの説明だけ読みたい方のために飛ぶようにしておきます。
節制
節制のカードの絵には、女性が両手にひとつずつ水差しを持ち、
片方の水差しからもう片方の水差しへと、
中に入っている液体を移している様子が描かれています。

このモチーフは、
中世のヨーロッパで教えられていた4つの枢要徳のうちの一つ、
「節制」を描く際によく用いられたもです。
ちなみに「節制」とはどんな教えなのかと言いますと、
度を超さないよう控えめにすること。ほどよくすること。
引用元:コトバンク
片方の水差しにはワインが入っており、
もう片方の水差しには水が入っているとされています。
じつは液体を移し替えているのではなく、
ワインを水で薄めている様子が描かれているのです。
「ワインを飲みたいが、たくさん飲むと体に悪い。ならば薄めて飲もう。」
そう考えてワインに水を足します。
一口飲んで「いやこれではワインの味がしない」とワインを継ぎ足します。
また味見をして「やはりこれでは体に悪い」とまた水を注ぎます。
水を入れたり、ワインを入れたり、何度も何度も試行錯誤を繰り返し、
その結果、水でもワインでもない、なんとも不快なものをつくりだしてしまいました。
本来なら飲む量を減らせば済んだ話です。
「ほどほどにしなさいよ」
「節制」のカードはそんなことを教えてくれるカードです。
悪魔
「節制」の次に並ぶカードは「悪魔」のカードです。
いろんなバリエーションのカードを用意してみたので、参考にしてください。



「悪魔」のカードには、正体不明の不気味な生き物が描かれています。
両性具有のように描かれることもあります。
また、2人の人間がヒモや鎖でつながれて囚われています。
正体不明のこの生き物は、人間なのか獣なのか・・・
男なのか女なのか・・・
どちらでもあり、どちらでもない、どっちつかずの曖昧さがあります。
じつはこの「中途半端さ」こそ、人に不気味さや不快さを感じさせる原因です。
そして、この中途半端な生き物こそ、
「節制」のカードの段階で自らが作り出してしまったものです。
自らが作り出した水でもないワインでもない不快な飲み物を
飲み続けなければならない、そんな状態を囚われた人間が表しています。
「悪魔」という存在は、知らず知らずのうちに自らつくりだしてしまう事があります。
この2人の人間は、自分自身で囚われる状況をつくりだしたことにまだ気づいていません。
このカードがあらわれたときには、
問題の原因がどこにあるのか、本質は何なのかを問われていると考えるとよいでしょう。
塔
最後に「塔」のカードです。

「塔」のカードには、
天にも届きそうなほど高い建物が描かれており、
その建物に雷が落ち崩壊しています。
建物から人間が飛び出しています。
ちなみに「塔」というタイトルは19世紀以降に用いられるようになりました。
それ以前は「神の家」「稲妻」「悪魔の家」などいくつかの呼び名があったようですが、
マルセイユ版タロットの多くは「神の家」というタイトルが多く採用されています。
「神の家」に雷が落ちて、
しかも崩壊するなんて出来事を誰が想像できるでしょうか?
「塔」のカードは、そんな想像もしなかったような突然の出来事を表します。
そして、これまでの状況が変化することも表します。
この出来事が果たして良いことなのか悪いことなのかは、誰にもわかりません。
ただ、ひとつ言えることは、
この出来事は誰のせいでもないということです。
それでは、3枚のカードの流れを少しまとめてみましょう。
「節制」→自ら水でもワインでもない不快なものを作り出しています
「悪魔」→自ら作り出した不快な飲み物を飲み続るという状況に陥っています
「塔」 →その後なにか酔いが醒めるような突発的な出来事が起こります
このような感じです。
「節制」→「悪魔」→「塔」
さて、ここからやっと本題です。
私が読んだ小説の流れはこんな感じでした。
主人公が親友と喧嘩別れをしてしまったあと、ある男性と知り合いになります。
その男性の発言が親友と似ているという理由から、
主人公は親友とその男性を重ねてしまい、その男性をあまり快く思っていませんでした。
表面上はうまく取り繕いながら接していますが、主人公は素性を隠したSNSで、
その男性と親友を見下した発言を繰り返していました。
それを誰かにバレることを怯えながら。
物語の中盤で、主人公は尊敬している先輩から
「親友とその男性の発言が似ているからといって、一括りにするのは違うんじゃないか」
「限られたなかで発言される言葉より、発言されなかった言葉を想像することも大切」
そんなようなことを言われてたしなめられます。
主人公は、先輩が自分の素性を隠したSNSの存在を知っているのではないかと不安になります。
ある日、その男性の彼女から
「あなたが素性を隠したSNSで、みんなを見下しているのをずっと以前から知っていた」
と告げられます。
そこで主人公は変わるきっかけを手に入れることになります。
さて、いかがでしょうか。
なんとなく「節制」→「悪魔」→「塔」の流れに似ていると感じませんか?
とくにSNSが発覚した瞬間なんて、
主人公からしたらいきなりグーパンチされたようなもんです。
読んでる私も「あら、こんなとこでバレるんだ」って、なんか予想外な場面でした。
今回はぜひ読んでください、と言えないのが悲しいです。
みなさんも小説を読んだあとに、
「この話はどのカードっぽいかな?」と想像してみてください。
そうすることで、カードのもつ世界観を具体的に理解できるようになると思います。